講演会


演 題 杉本一文トークセッション+オリジナルカバーアート
講 師 杉本一文氏他
日 時 2010年7月18日(水)
会 場 浅草橋[paraborica-bis]

 横溝正史の角川文庫版表紙絵の原画十数点(「びっくり箱殺人事件」「仮面舞踏会」「人形佐七」など)の原画が展示がされていました。

 狭山市立博物館(2006年)の展示ではガラスケースに納められていた原画が、テーブルの上にポンと置かれていて、思わず、手にとってみたくなりました。また、映画「悪魔が来りて笛を吹く」「獄門島」「犬神家の一族の」ポスターの原画や「ダ・ヴィンチ金田一耕助the Conmplete」の表紙絵の原画もありました。どの絵もとてもすばらしかったです。

 トークセッションの方は、企画をされた杉本氏の銅版画仲間の方、司会をされた横溝ファンの方、舞台で金田一耕助を演じられている役者さん(金田一耕助の扮装をされてました。)、杉本氏の4人が並んでのセッションとなりました。

 まずは、角川文庫の表紙絵を描くようになったいきさつから。

 デザイン事務所に在籍していた時に自費出版した本をあちこちの出版社などに送っていたが、それに目をとめられた角川書店の方に依頼されたとのこと、死=黒枠ということで、戦前からの角川文庫の白い表紙に黒枠をつけた。本の表紙のデザインは、表紙絵を描く人とカバー全体のデザインをされるのは別の人がやるようですが、杉本氏はお一人でなさったようです。

 表紙絵は、同じ作品でもなんどか変わっていますが、それは出版社の都合(映画化やドラマ化、横溝フェアなど)とのこと(表紙絵違いの小説を何冊も持っている横溝ファンも多いですね。)

 『真珠郎』のモデルは、ご自身のお若い頃だそうで、今はすてきなおじさまといった感じですが、その頃はきっと美青年だったのでしょう。『病院坂の首縊りの家』も、やはりご自分の結婚式の写真をモチーフに描かれたとのことでした。

 表紙絵は、小説を読んでみてひっかかった内容をモチーフにされていたそうですが、エロチックな絵もあり、当時の中学生、高校生は買いづらかったようです。

 司会の方から『びっくり箱殺人事件』の箱に隠された文字などについてのお話がありました。箱に浮かび出ている、S、I、G、、、の文字。遊び心も満載だったのですね。それを見つけるファンも凄いですが(笑)

 どの作品も目が特徴的に描かれているのは、目は人を惹き付ける最善最良のもであるから、手にとってもらう、そして買ってもらう。やはり商業デザイナーをなさっていた氏らしいです。

 横溝正史の他にも、半村良や土屋隆夫の表紙絵、教科書の挿絵を描かれたこともあるそうです。50歳を過ぎてから、イラストレーションの世界もデジタル化が進み、ついていけないなぁと感じられた氏は、銅版画の道を選ばれ、現在は蔵書票作家をされています。

ヨーロッパ圏の蔵書票のイベントに作品を出品して、好評を得てあちこちから注文がきているそうです。

 立ち見が出るほどの盛況で、最後に司会の方のご好意で提供された、角川文庫へのサイン会や、杉本氏とのツーショット写真撮影

などもあり盛り上がりました。

 会が終わったあと、参加されていた浜田知明さんに、二松学舎大学の横溝正史資料の整理の進捗状況をお聞きしました。

 原稿は八千枚ほどあり、きれいな物もあるが、紙魚で破れたり、インクが滲んでいたりといろいろだそうです。現在は表面(書き損じ)と裏面(下書き)に書いてある文章つなげて読んでみて、それがどの作品なのかを調べるというような仕事をしていると。なんか、気の遠くなるような作業です。また、あたらしい発見があればいいのですが。