悪魔の手毬唄 | |||||
名 前 |
青池リカ(あおいけりか) |
家 族
|
夫:源治郎(亡) 息子:歌名雄 娘:里子 |
年齢 | 48歳 |
職業 | 湯治場「亀の湯」おかみ | ||||
容 姿 |
見たところは、いくらか年よりは老けていて、どうみても五十より下にはみえない。と、いって、よぼよぼしているというのではなく、どうしてどうして、細作りで、いっけん華奢には見えているけれども、背もたかく、いかにもしっかりものといったかんじである。 夏のことだからふだんは簡単服を着ているが、それもけっしてだらしない格好ではなく、髪などもいつもきちんとなであげている。おまけに金田一耕助の座敷へ顔を出すときには、いつもきものに着かえてでるというたしなみももっている。上方ふうというよりは、どちからというと京女といったふうな、きめの細かい、うりざね顔の、昔はそうとうの美人だったと思われるような女だ。 (角川文庫版 32p) |
||||
犯 罪 |
過去の犯罪(夫殺し)を知る、多々羅放庵を殺し、亡夫がよそで産ませた娘達の由良泰子、仁礼文子を絞殺、別 所千恵子と間違えて自分の娘である里子まで撲殺してしまう。千恵子の家に放火したところを、張り込んでいた金田一耕助らに見つかり、逃走の末、破水した溜め池に飛び込んで死ぬ。 | ||||
考 察 | 一番悪いのは、あっちこっちで女作っては子供を産ませた夫の源治郎だろうが、4人もの人間を次々と殺してしまうのは凄い。 自分の産んだ娘の里子が、半身に赤痣のある姿に生まれたのに比べ、他の三人の娘達が皆、美貌に恵まれているということへの妬みや、腹違いの兄である歌名雄と泰子や文子との縁談。その犯行の動機は、女として母としてわかる気もするが。 | ||||
映 像 |
1961年11月15日公開/東映東京
ストーリーは原作と全く違っており、青池リカも出てきません。 |
||||
1971年6月22日~7月20日放映(全5回)/日テレ/(時子)斎藤美和(44)
「おんな友だち」という題名で放映された金田一耕助の登場しない作品です。 |
|||||
1977年4月2日公開/東宝/岸恵子(45) | |||||
1977年8月27日~10月1日放映(全6回)/毎日/佐藤友美(36) | |||||
1990年10月5日放映/TBS/有馬稲子(56) | |||||
1993年9月24日放映/フジ/いしだあゆみ(45) | |||||
2009年1月6日放映/フジ/かたせ梨乃(52) | |||||
吸血蛾 | |||||
名 前 | 浅茅文代(あさじふみよ) | 家 族 | 年 齢 | ||
職 業 | ファッションデザイナー | ||||
容 姿 |
ちかごろ女流服飾界の第一人者といわれる浅茅文代は、ファッション・モデルとしても卓抜した技術を身につけている。 身長五尺四寸の肉体は、均斉のとれた八頭身で、そのうえに、パリじこみの洗練されたゼスチュアが、見るひとをして恍惚をたらしめるといわれている。彼女はいつも、じぶんの手に属する虹の会のメンバーとともに、自分も自己のデザインによる衣装を身につけて、登場することにしているが、こればかりは、ほかのデザイナーたちが、どんなにくやしがってもできない相談だった。 (東京文芸社版 12P)
文代はたしかにうつくしい。 (東京文芸社版 30~31P)
文代はまず髪をときほぐし、パジャマに着かえようとして、シュミーズを下のほうへすべらせたが、ふと左の乳房に眼をとめると、そのままシュミーズをぬごうとする動作をとめた。文代はじっさいきれいな体をしている。胸がきっと張って、ふっくらとした乳房のうえに、薔薇の芽生えのような桃色の乳首、肌は象牙のように白くなめらかで、細くなよやかに引き締まった腰……まったく日本人としては珍しいほど、均斉のとれた体をしているが、しかし、文代はいまじぶんのうつくしさに見惚れているのではない。 (東京文芸社版 42P) |
||||
犯 罪 |
ファッション・デザイナーをめざしていた文代は、留学先のパリで画家の伊吹徹三と知りあい同棲する。伊吹にデザイナーの才能があると知った文代は、デザインを盗み、彼を旅行につれだし崖から突き落とす。帰国した文代は長岡秀二というパトロンを得て、服飾店「ブーケ」を開店し、盗んだデザインで一流のデザイナーとなるが、そこへ死んだと思っていた伊吹が帰国する。 文代は狼憑きとなった伊吹に脅迫され、ふたたび関係を持つが伊吹を殺す。殺人現場を弟子の村越徹に見られた文代は徹に犯され、徹が伊吹になりすまして、文代の服飾店「ブーケ」の専属ファッション・モデル達を次々と殺していく淫楽殺人の手伝いをすることになってしまう。 徹の犯行を隠す為、狼男の扮装をして表れたり、デザイン盗用の秘密を知っている日下田鶴子を射殺したりと、罪を重ねていく。しかし、徹がムッシューQと名乗り文代を脅迫した長岡秀二を射殺してしまう。愛人を殺され、デザイン盗用がばれ一流デザイナーとしての地位も失った文代は、舌を噛んで死ぬ。 |
||||
考 察 |
美貌には恵まれていた文代だが、デザイナーとしての才能はなかった。同棲していた伊吹のデザインを盗み、一流デザイナーと呼ばれるようになる。しかし、それは長く続かなかった。 美しいが才能がなく、それでいて虚栄心のとりこになっている女、庇護したくなる女。そんな女をつい苛めてしまいたくなる男。恐い組み合わせだ。文代は悪女というより、虚栄心の塊の愚かな女なのかもしれない。 |
||||
映 像 | 1956年4月11日公開/東宝/久慈あさみ(34) | ||||
1977年10月15日放映/テレ朝/大空真弓(37) |
|||||
悪魔の寵児 | |||||
名 前 | 石川早苗 (いしかわさなえ) | 家 族 | 義兄(従兄):宏 | 年 齢 | 25歳 |
職 業 |
バア「カステロ」ホステス |
||||
容 姿 |
早苗はことし二十五歳。すらりと姿のよい娘で、どちらかというと楚々たる美人の部類に属するほうだろう。いまだかつて大声ではしゃいだことのない女で、うれしいときでもにっこり微笑するだけ、どこか妖精のような感じのする女である。 (角川文庫版 18P) |
||||
犯 罪 |
風間欣吾の息子である義兄(従兄)の宏と共謀して、欣吾の妻、美樹子を宏との心中にみせかけてモルヒネを注射して殺し、その死体を欣吾の前妻である望月種子らを操り、盗み出させる。 そして、欣吾の愛人の一人である保坂君代を絞殺し、君代の美容院の開店披露パーティの日に全裸の君代と欣吾の蝋人形を箱に詰め送りつける。 ま た欣吾のもう一人の愛人、宮武益枝を絞殺。望月種子の愛人の黒亀を刺殺し、二人の死体を全裸して朽ち果 てたアトリエの放置する。そして秘密を知った種子を毒殺する。欣吾の三人目の愛人、城妙子を扼殺、風間美樹子の前夫、有島忠弘を毒殺し「Qホテル」に残して行く。そして最後の愛人と思われる湯浅朱美を朱美の新築中の家で殺そうとしているところを張り込んでいた金田一耕助ら見つかり、青酸加里を飲んで死ぬ 。 |
||||
考 察 | 悪女というのは見目形ではわからない。妖精のような女が、己の私利私欲の為に次々と殺人を行う。そのやり方がむちゃえげつない、殺人を楽しんでいるかのようだ。こんな女と結婚しなくてよかったなぁ>水上三太くん | ||||
映 像 | なし | ||||
暗闇の中の猫 | |||||
名 前 |
伊藤雪枝(いとうゆきえ) | 家 族 | 年 齢 | 27,8歳 | |
職 業 | キャバレー「ランターン」マダム | ||||
容 姿 |
マダムの雪枝はこの暑さに、汗で化粧くずれがするのを気にしながら、一番奥のブースに座っていた。年齢は二十七、二十八だろう、すらりと背のたかい、目鼻立ちのかっきりとした、潤いだとか、陰影だとかを礼賛するひとたちにはどうかと思われるが、ぱっと目につく器量である。 春陽文庫『悪魔の百唇譜』257P〜258P |
||||
犯 罪 |
佐伯誠也、高柳信吉と銀行強盗をした雪枝は、逃げ込んだ改装中のキャバレー「ランターン」で警官に追いつめられる。男達を拳銃で撃ち、金を店内に隠し逃走する。高柳は死んだが、佐伯は重傷となった。 改装の終わったキャバレー「ランターン」にダンサーとして雇われた雪枝は経営者の寺田甚蔵とねんごろとなり、マダムとなるが、そこへ記憶喪失となった佐伯が来店する。彼の記憶の奥にある「暗闇の中の猫」の目を持つ雪枝は、佐伯の記憶が戻るのをおそれ射殺する。そして、雪枝の目の秘密を知っている寺田をカクテルに入れた青酸カリによって毒殺しようとするが、そのカクテルを過って飲み死ぬ。 |
||||
考 察 |
戦争が女を悪女に変えてしまったのでしょうか?ためらいもなく、仲間だった男達を殺していきます。 |
||||
映 像 | なし | ||||
黒猫亭事件 | |||||
名 前 | 糸島繁子(いとじましげこ) | 家 族 | 夫:大伍 | 年 齢 | |
職 業 | バア「黒猫亭」マダム | ||||
容 姿 |
「ながらく外地にいたものだから、かえってこんな姿に心がひかれるのよ」 そういって彼女はいつも、銀杏返しなんかに結って、渋い好みの着物を着ていた。細面の、痩せぎすの、姿のよい女で、顔立ちも万事細づくりながら、かっきりとした目鼻立ちをしていたが、いささか整い過ぎて。かえって淋しく、それにいくらか安でにみえる難があった。しかし何といっても、この界隈で、彼女に太刀討ち出来るほどの女はいなかったので「黒猫」の客はたいてい彼女がお目当てだった。 (角川文庫「本陣殺人事件」311P) |
||||
犯 罪 |
松田花子は、姑を毒殺しようとして過って夫を殺し、中国へ高飛びした。名前をかえ、素性もふかく包んでいたが、糸島大伍に発見され、脅迫され夫婦となる。戦後の強制送還の為、一足先に日本へ帰った来た花子は名前を糸島繁と変え、風間俊六の愛人となる。 ひとときの安住を得ていたお繁だが、そこへまた大伍が帰国する。風間を愛していたお繁は、大伍を殺し自分の存在を抹殺するため、大伍が自分を殺して出奔したようにみせかけようとする。 言葉巧みに大伍をだまし、一人二役を演じて桑野鮎子という女を作り上げる。身代わりとして小野千代子を殺すと、バーの裏庭に埋めさせる。そして隣家の僧日兆を操り大伍を殺させるが、金田一耕助に見破られ、自分の胸を拳銃で撃ち死ぬ 。 |
||||
考 察 | 殺そうと思っている男に、愛人の死体を埋めさせたりして、怖い女です。なにせ、金田一耕助まで道連れにしようとするんですもん。 | ||||
映 像 | 1978年9月2日~9日放映(全2回)/TBS/太地喜和子(35) | ||||
犬神家の一族 | |||||
名 前 |
犬神松子(いぬがみまつこ) |
家 族 |
父:佐兵衛 妹:竹子 妹:梅子
夫:亡 |
年 齢 |
52,3歳 |
職 業 | |||||
容 姿 |
利かぬ気らしい五十婆さんである。 (角川文庫版 59P)
姉の松子の細いながらも強靱な体質に比して・・・ (角川文庫版 60P)
松子夫人はあいかわらず、しんねり強い顔色で、たばこ盆をひきよせて、悠然として、長ぎせるで刻みたばこをすっている。細いながらも、バネのように強靱な体質をもったこの女は、いったい、いまなにを考えているのであろうか。 (角川文庫版 350P) |
||||
犯 罪 |
古館法律事務所の所員、若林豊一郎から父犬神佐兵衛の遺言状の内容を知った松子は、その遺言が、野々宮珠世に有利なものだと知ると、珠世を殺そうと画策するが、失敗に終わっていた。 遺言状を盗み見たことが発覚することを恐れた松子は、若林を青酸カリ入りのタバコで毒殺する。そこへ顔に酷い傷を負い息子の佐清に化けた青沼静馬が復員する。珠世と結婚した者が犬神家の財産を受け継ぐことになれば、佐清は不利である。そう思った松子は、佐武を刺し殺す。その場面を見ていた静馬と佐清は、佐武の首を切り落とし、菊人形の首とすげかえ、松子の犯行を隠す。次に佐智を絞殺するが、 これも又、佐清の手により、首に琴糸を巻いた死体となり、松子の犯行とは思われなかった。顔に傷のある佐清が、青沼静馬であることを知った松子は、静馬を殺す。金田一耕助により、すべての真相があきらかになったとき、青酸カリ入りのたばこにより自殺する。 |
||||
考 察 |
夫を亡くし、生きがいはひとり息子の佐清だけだった。その息子に犬神家の財産を相続させるために次々に殺人を行う。 佐清さえ、幸せ(遺産を相続すること)になれば、自分はどうなってもいい、盲目的な愚かな母の愛による犯行、といってしまえばそれで終わりなのだろうが、血の繋がった、甥や弟を殺すことをなんの躊躇いもなくやってのけるのは、父にも母にも愛されずに育った為だろうか。
(角川文庫版 399P) |
||||
映 像 |
1954年8月10日公開「犬神家の謎・悪魔は踊る」/東映京都/小夜福子(45) |
||||
1970年8月25日~9月29日放映(全6回)「蒼いけものたち」/日テレ/(雪子)沢村貞子(62) 金田一耕助の登場しない作品です。沢村貞子は、松子のしんねりとした、強靱なという言葉がぴったり。原作と違い、父親との葛藤があまり描かれていないので、より母の愛が強調された感がありました。 |
|||||
1976年11月13日公開/(角川春樹事務所)東宝/高峰三枝子(68) | |||||
1977年4月2日~30日放映(全5回)/毎日/京マチ子(53) | |||||
1990年3月27日放映/テレ朝/岡田茉莉子(57) 犬神家の遺産相続をするためには何でもする女です。父親との確執も生半可ではありません。母とともに捨てられ、辛酸を舐めたが、二十歳を過ぎたときに佐兵衛に引き取られる。犬神家の全財産を相続することが佐兵衛への復讐であるかのようでした。 |
|||||
1994年10月7日放映/フジ/栗原小巻(49) | |||||
2004年4月3日放映/フジ/三田佳子(63) | |||||
2006年12月6日公開/東宝/富司純子(60) | |||||
悪霊島 | |||||
名 前 | 刑部巴(おさかべともえ) | 家 族 |
夫:守衛 娘:真帆・片帆 祖父:天膳(亡) 祖母:珊瑚(亡) 大叔父:大膳 |
年 齢 | 39歳 |
職 業 | |||||
容 姿 |
金田一耕助の計算によると、巴御寮人はことし三十九歳になるはずだが、こうみたところ三十そこそこにしか見えなかった。左右にしたがえた双子の姉妹、真帆と片帆の母とはどうしても思えない。三人とも長い髪をうしろに垂らして、薄いピンクのブラウスに、濃い朱色のスラックスというお揃いの姿だったが、それが金田一耕助に巫女を連想させた。
それにしても巴御寮人を見たとき、金田一耕助はなぜ激しい戦慄を感じたのか、相手があまりにも美しかったからである。磯川警部もいっていたとおり、一卵性双生児であるところの真帆片帆は瓜二つほどよく似ていて美しい。しかし彼女たちの母なるひとの美しさは、それをはるかに超えていた。 (角川文庫版 128P) |
||||
犯 罪 |
17歳の時、敵対する家の息子越智竜平と恋におちた刑部巴は、竜平と駆け落ちをする。しかし、竜平の従兄弟、吉太郎の裏切りにより連れ戻され、竜平は巴の大叔父大膳の策略により召集される。 そしてお金のなくなった自分を捨てようとした、大膳を黄金の矢で刺し殺し、双子の娘の一人、片帆まで殺してしまう。最後は絶望のあまり、刑部島の断崖から身を投げたのではと思われるが、その遺体は見つからなかった。 |
||||
考 | 17歳という若さで、シャム双生児を産んだことにより、巴の中の何かが壊れたのでしょう。悪女と言うより狂女と言った方がいいのかもしれません。 | ||||
映像 |
1981年10月3日公開/(角川春樹事務所)東映 /岩下志麻(40) |
||||
1991年10月14日放映/フジ/島田陽子(38) | |||||
1999年3月8日放映/TBS/山本陽子(57) | |||||
殺人鬼 | |||||
名 前 | 加奈子(かなこ) | 家 族 | 夫:亀井淳吉 | 年 齢 | 27,8歳 |
職 業 | |||||
容 姿 |
その女は、そうとう豪奢な毛皮の外套にくるまっていた。頭には造花をあしらった小さい帽子を、額がかくれるようにのっけていて、その帽子には薄い紗が、あわのように盛りあがっていた。年齢は二十七、八であろう。どちらかというと面長の、日本流の顔立ちなのだが、化粧がたくみなせいか、ちっとも古くさい感じのしない、典雅な、貴婦人といったふうな、美しい面影をつくりあげていた。 (角川文庫版 8P)
女は一種の感情をこめた瞳で、またやさしく私をにらんだ。今日の彼女はこのあいだとちがって正装ではなく、小ざっぱりとしたアフタヌーンを無造作に着て、化粧もごくあっさりしたものだったが、それでいてこの女の美しさは非常なものであった。この間は夜だからきがつかなかったが、肌の美しさは真珠のようであった。それにものをいうとき、上眼でやさしく相手をにらんで、子供のように小首をかしげるその所作に、なんともいえぬ色気があり、私は口の中に生唾がたまるようなかんじだった。加奈子は私の目のいろに気がついたのか、はっと居ずまいを正すと、ボーッと頬を染めた。私もそれで、自分のかおいろに気がつくと、あわてて目をそらした。 (角川文庫版 22P)
それにしても加奈子という女も恐るべき女だ。今の御主人は何をしているのかと訊ねると、ふふふとうすくわらって、 (角川文庫版 31P) |
||||
犯 罪 |
戦争中、大阪に住んでいた加奈子は、親の義理でしかたなく亀井淳吉と結婚するが、淳吉の出征後、隣家の賀川達哉と東京へ出奔する。 そして、戦後ヤミブローカーとなった加賀と共に、ヤミ商人を騙してお金を取り上げ殺すという行為を重ねていた。そこへ、義眼義足となった亀井淳吉が現れる。殺人がばれそうになった為、賀川は淳吉を殺す。加奈子は、作家の八代竜介に淳吉が生きていて、自分を脅しているようみせかけようとする。淳吉からの知らせで賀川の本妻、梅子が上京し、淳吉の偽物は夫の達哉だと見破る。達哉は加奈子を絞殺しようとするが、逆に加奈子に撲殺される。 夫が連続殺人の犯人であることが発覚することを恐れた梅子は加奈子と共謀し、加奈子が淳吉に襲われたようみせかけ、淳吉に化け逃げ、秘密を守るため自殺する。金田一耕助により、犯罪が暴かれた加奈子は逃走するが、竜介に居所を知られ二人で逃走の果て心中する。 |
||||
考 察 | 美貌に恵まれた女性である、贅沢な生活を望んだ加奈子は、賀川と共に殺人を重ねていた。美しく高貴な顔の下に殺人鬼の顔を持つ加奈子。お金を得る為の殺人だけではなく、加奈子の奥底には、人を殺すことで快楽を得る性質があったのかもしれない。 | ||||
映像 | 1988年7月26日放映/TBS/藤真利子(32) | ||||
洞の中の女 | |||||
名 前 | 甲野珠子(こうのたまこ) | 家 族 | 夫:日疋隆介 | 年 齢 | |
職 業 | |||||
容 姿 |
「あら、ハルミちゃんじゃないの、あんたその後、どうしてるの?」 いまや日疋夫人におさまっている珠子の調子にはどこか傲然たるところがあり、ハルミを眼下に見下すようなそぶりである。器量からいっても、また服装からいっても、いまやふたりのあいだには格段の相違が見られる。 (春陽文庫 金田一耕助の冒険 69〜70P)
日疋はまぶしそうに珠子の視線をさけているが、その珠子は冷然としてうつくしい。 (春陽文庫 金田一耕助の冒険 71P) |
||||
犯 罪 |
勤めているキャバレー「ドラゴン」の経営者、日疋隆介の妻になるため、同僚だった山本田鶴子を青酸カリで殺し、その死体を田鶴子の内縁の夫だった品川良太に日疋の家のケヤキの木の洞にセメント詰めにさせる。そして、その罪を隆介にかけようとするが、金田一耕助に見破られて失敗する、共犯だった良太を青酸カリで毒殺する。 |
||||
考 察 | 元ナンバーワンホステスということで美人であったのだろう。目的の為には手段を選ばない女。悪女の基本なのか? | ||||
映 像 | なし | ||||
死神の矢 | |||||
名 前 | 佐伯達子(さえきたつこ) | 家 族 | 年 齢 | ||
職 業 | 家政婦 | ||||
容 姿 |
しかし、さいわい佐伯達子というのが教養のあるりっぱな婦人だったので… 春陽文庫8p かつての血色のよい、そして愛想のよかった佐伯達子の面影はどこにいったのか、物思わしげなその顔は深い憂いの色にしずんで、喪服のようにまっくろな衣装につつんだその痩身といい、またしずんだ口のききかたといい、なにかしら暗い影をひいているような感じだった。 (春陽文庫16P) 痩身ながらもすらりとした背の高い姿勢の良い婦人で、美人とはいいにくいれど、白髪まじりの髪をいつもきちんとひっつめにして、柔和で、聡明なおもだちが、だれにでも信頼感をあたえるのである。
(春陽文庫17P) |
||||
犯 罪 |
古館早苗の母が亡くなってからずっと彼女を母親がわりに育ててきた佐伯達子は、早苗にプロポーズをした高見沢康雄、神部大助、伊沢透ら三人の男達の中に、早苗の友人で早苗の父古館博士の恋人だった三田村文代を自殺に追いやった人物がいることを知る。 達子は、早苗の婿選びに使った弓矢で、伊吹透をバスルームで刺し殺し、神部大助のアパートで大助も矢で刺して殺す。そして早苗の三田村文代追悼公演の日、康雄を射殺す。すべてが終わった後、毒を飲んで死ぬ。 |
||||
考 察 |
幼い頃から育ててきた早苗にプロポーズをした三人の男達が、そろいも揃ってろくでもない奴らなのに、早苗を愛する父、古館博士が三人を早苗の花婿候補にしたのは、彼らの中に博士が愛し、結婚まで考えた三田村文代を、自殺に追いやった男いるので復讐を考えていることを知り、博士に殺人を犯させない為、達子は三人の男達を次々に殺していった。 達子は恐ろしい連続殺人犯であったかもしれないが、悪女とは呼べないだろう、この世に肉親というものを持たない達子にとって、唯一の存在だった古館親子の幸せを守ろうとした悲しい女性なのだ。 |
||||
映 像 |
1989年3月27日放映/TBS/松尾嘉代(46) 原作と違い、実は三田村文代の実の母親だったいう設定なので、より動機は深い。松尾嘉代の達子は美しく色っぽい。古館博士は文代より、達子に惹かれそう。 |
||||
迷路荘の惨劇 | |||||
名 前 | 篠崎倭文子(しのざきしずこ) | 家 族 |
夫:慎吾 義理の娘: 陽子 |
年 齢 | 三十代半ば |
職 業 | 主婦 | ||||
容 姿 |
公卿華族の血をひいている倭文子は、一見ほっそりしてたおやかで、まるで繊細な美術工芸品を見るような美しさである。とても慎吾のような野性的な抱擁に、耐えられそうにもない感じだが、こういう女にかぎって、絡みつく蔓草のような、ねばっこい強靱さをもっているのかもしれないと、金田一耕助は失礼なことを考える。 (角川文庫版 42P) |
||||
犯 罪 |
夫の篠崎慎吾が自分と離婚しようしていることを知った倭文子は、前夫の古館辰人と慎吾の殺害を計画する。 |
||||
考 察 |
いつも、感情を表に出さない女である。が、その能面 のような顔の下で恐ろしい殺人計画を企て、実行する。婚約者だった柳町善衛を捨て、古館辰人結婚するが、辰人がおちぶれるとさっさと、篠崎慎吾の妻となる。 慎吾が自分と別れようとすると、慎吾を殺害し、全財産を自分のものにしようとする。自分の利にならないものには、なんの興味も持たない女である。自分を愛している男ですら平気で殺そうとする。この人にとって一番大切なものというのは、何だったんだろうか?華族という地位 ?それとも欲しい物はなんでも手に入る生活?両方持っていない私にはわからない。 |
||||
映 像 | 1978年10月14日~28日(全3回)/TBS/浜木綿子(43) | ||||
2002年10月2日放映/テレ東/羽田美智子(34) | |||||
幽霊座 | |||||
名 前 |
篠原アキ(しのはらあき) | 家 族 | 息子:静雄(紫虹) | 年 齢 | |
職 業 |
紫紅(静雄)の付き人 |
||||
容 姿 |
色の浅黒い、縮れっ毛の、醜婦というほどではないにしても、お世辞にも美人とは、いいかねる女であった。手脚などもごつごつして、まるで男のようであったといわれる。
|
||||
犯 罪 |
歌舞伎役者佐野川鶴之助が、肺炎の予後療養の為、滞在いていた茅ヶ崎の別荘で、看護婦として雇われる。鶴之助との間に静雄(紫虹)を産む。しかし、静雄は鶴之助の父、鶴右衛門の子として引き取られ、手切れ金を貰って別れさせられる。 その後、土木業者の男と結婚するが、この男の酒乱と虐待に耐えかねて、ストリキニーネを飲ませで毒殺し、十年の実刑をうけ、服役する。出所後、我が子静雄が、弟の光雄や鶴之助の弟子仙枝を殺すという殺人鬼性を持っていることを知り、ショックを受けた鶴之助と共に満州に渡るが、鶴之助が死ぬと、日本へ戻り、男に化け民造と名を変えて、紫紅(静雄)の付き人となる。 そして紫虹と共謀として「稲妻座」を乗っ取ろうとする。舞台に仕掛けをして、鶴之助の子雷蔵を殺害しようとするが、紫虹が死んでしまう。そして仕掛けを取りに来たところを男衆の音平に見られ、刺殺するが、金田一耕助に篠原アキであることを見破られて、仕掛けに使ったニコチン入りのごむまりを刺して死ぬ。 |
||||
考 察 | 若く美しい鶴之助との間に子供まで出来たのに、別れさせられてしまったアキは、きっと鶴右衛門達を恨んだことでしょう。それが、我が子まで巻き込んでの殺人を犯すことになったのでしょうか。悪女の深情けというのはこういうこというのでしょうか? | ||||
映 像 |
1997年1月3日放映/TBS 原作とストーリーは全く違い、篠原アキも出てきません。 |
||||
白と黒 | |||||
名 前 | 戸田京美(とだきょうみ) | 家 族 |
母:戸田房子(亡) 伯父:岡部泰蔵 伯母:岡部梅子(亡) |
年 齢 |
19歳 |
職 業 | 「タンポポ」のお針子 | ||||
容 姿 |
引き締まった顔がよく整って、すらりとした体の線が大人と子供の中間を思わせる。赤と黄のあらい横縞のセーターを着ていて、スラックスをはいた脚がのびのびしているのもちかごろの娘らしい。 (角川文庫版 12P) |
||||
犯 罪 |
両親を亡くし、伯母夫婦に引き取られていた京美は、伯母が亡くなり、血の繋がらない伯父が再婚をしようとしたのを妨害するため、自分と伯父に性的関係があるという怪文書を伯父の婚約者白井寿美子の兄直也におくる。 直也が友人の新聞記者に真相をつきとめるように依頼したため、友人の同僚で日の出団地に住む細田敏三の妻アイ子の口から画家の水島に怪文書の件が伝わる。水島は同じ内容の怪文書を京美に送る。怪文書を見た京美はショックを受け、自殺を図るが管理人の根津に発見される。怪文書を出したのが、同性の愛人で洋裁店「タンポポ」のマダム、片桐恒子ではないかと疑った京美は、恒子を千枚通しで刺し殺す。 そして、殺人現場に訪ねてきた須藤達夫も殺す。恒子がかつての軍隊時代の部下の一柳忠彦の前妻、洋子の仮姿だと知っていた根津は、真相を隠す為恒子の体にコールタールをかけ顔がわからない様にし、達夫を池に沈める。根津の工作により、京美の殺人は発覚しなかったが、白と黒という言葉から京美を疑ったタマキを撲殺し、タマキと一緒にいたところを目撃していた、根津の娘由紀子を刺殺しようとしたところを根津の飼っていたカラスのジョーに目をくり抜かれ、張り込んでいた刑事に逮捕される。 |
||||
考 察 |
美しく、受験に失敗したとはいえ、頭のよかった京美は義理の伯父が若い女性と結婚することを好まなかった。 団地の狭い部屋で新婚夫婦と同居できるわけなく、自分は追い出されるのではないかという不安、そして嫉妬めいた感情から自分まで傷つけるような噂をねつ造するが、それがまわりまわって我が身にふりかかってしまった。 根津の工作により、恒子と達夫を殺したことが発覚しなかったため、自分の犯行に自信を持ってしまい、次々に殺人をおこなってしまったのだろう。 |
||||
映 像 |
1962年11月23日放映/NET/堀江璋子(?) 台本を読む限り、ストーリーも犯人も犯行の動機も、ほぼ原作通り。ただ、長編であるこの作品を一時間におさめたせいか、京美の出番が少なすぎ。 |
||||
夜の黒豹 | |||||
名 前 | 中条奈々子(なかじょうななこ) | 家 族 | 夫:辰馬(亡) | 年 齢 | 32,3歳 |
職 業 | 画家 | ||||
容姿 |
女としては上背のあるすらりとした姿がスマートだった。取り立てていうほどの美貌ではないが、化粧らしい化粧もしてないこざっぱりとした目鼻立ちが、かえっていきいきとした表情にとんでいて、それはそれなりにチャーミングである。言語動作、すべてがきびきびとして歯切れのよいのも爽快だった。年は三十二、三であろうか、広い額と表情にとんだ目がこの女の聡明さを思わせる。 (角川文庫版198P) |
||||
犯 罪 |
倒産した小林家を救うため、四十近くも年のはなれた中条辰馬と結婚した奈々子は、辰馬が常用していた強肝剤に毒を入れ殺し、関係のあった主治医の佐々木裕介に心筋梗塞と診断させる。 そして裕介の妻、麻耶子を自動車のブレーキに細工し事故死させる。麻耶子の娘、由起に弱みを握られた奈々子は由起を殺すため、まず葉山チカ子と名乗り渋谷の「ホテル女王」に行き、胸に青トカゲの絵を描きそれをホテルの従業員の山田三吉に発見させ、変質者に襲われたようにひとり芝居を演じる。 そして街娼の水町京子を「ホテル竜宮」で絞殺し、胸に青トカゲの絵を描く。山田三吉の証言から、葉山チカ子に化けていたのが発覚するのをおそれた奈々子は三吉を車でひき殺す。 由起を旅館「みやこ鳥」に誘い出して絞殺し、胸に青トカゲの絵を描き、変質者「青トカゲ」による連続殺人の様に見せかける。事件を由起の従兄弟で漫画家で少女趣味のある丘朱之助こと岡戸圭吉に仕業にみせかけるため、圭吉が「青トカゲ」であると投書をする。圭吉をおびき出し、裕介に殺させる。犯罪がばれるのをおそれた奈々子は、共犯の裕介を強肝剤に入れた毒殺しようとするが、失敗し、等々力警部らに逮捕される。 |
||||
考 察 | 先夫を毒殺し、莫大な財産を相続して、女流画家としても順風満帆の将来を約束されていた奈々子は、自分の策に溺れてしまっていたのかもしれない。 悲しい女性である。 | ||||
映 像 | なし | ||||
仮面舞踏会 | |||||
名 前 | 笛小路篤子(ふえこうじあつこ) | 家 族 |
息子:泰久 嫁:八千代 孫:美沙 |
年 齢 | 70歳 |
職 業 | |||||
容 姿 |
茶系統色の上布をすこし抜き襟にして、紗のふくろ帯をゆったりとしめ、手に黒っぽい鼻紙袋をさげているこの婦人は、おそらく齢七十歳になんあんとするのであろう。しかし、小づくりながらも筋金入りのような体をしていて、京おんなとくゆうの卵型の顔はさすがにいくらか萎びているが、老班のあともみとめらぬ くらいみずみずしく、眉をかき、薄化粧をしていても、それが不自然とはみられなかった。 (角川文庫版175p) |
||||
犯 罪 |
義理の息子の笛小路泰久と鳳千代子の娘、美沙を育てていた篤子は、空襲で美沙を死なせてしまう。千代子の旺盛な生活力による援助を失いたくなかった篤子は、女の子をさらい美沙として育てる。 美沙が連続殺人犯だと発覚したことを知った篤子は、千代子を毒殺し道連れにしよとするが、金田一耕助らに見つかり、青酸カリを飲んで死ぬ 。 |
||||
考 察 |
堂上華族の家に生まれ、継母の手によって育てられた篤子は、笛小路泰為に嫁ぎ、夫の放蕩や浮気癖に悩まされ続け、妾腹の子泰久を引き取り育てなければならなかった。
悪女の最後の言葉である。 |
||||
映 像 | 1978年6月3日~24日放映(全4回)/TBS/音羽信子(54) | ||||
1986年10月4日放映/テレ朝/荒木道子(69) | |||||
仮面舞踏会 |
|||||
名 前 | 笛小路美沙(ふえこうじみさ) | 家 族 |
祖母:篤子 父:篤久 母: 千代子 |
年齢 | 17歳 |
職業 | |||||
容 姿 | 美沙はデリケートで、どこかこわれやすい工芸品みたいな美しさをひっそり育てていた。日陰に咲いた花のような病的な美しさでもあった。 | ||||
犯 罪 |
父と信じていた笛小路泰久に乱暴された美沙は、自分が笛小路家の娘ではないことを知る。酩酊した泰久を騙しプールへ入れ死亡させる。 そして、自分が鳳千代子の娘でないことを知っている、津村真二、槇恭吾を青酸加里で毒殺する。金田一耕助によってすべてが発覚した後、一緒に逃走していた、田代信吉に射殺される。 |
||||
考 察 |
悪女と呼ぶには幼すぎるかもしれない。 人を愛することを知らない篤子に育てられてられたせいで、美沙もまた人を愛することを知らなかったのだろう。笛小路美沙という仮面をかぶせられ、演じなければいけなかった不幸な娘である。 |
||||
映 像 | 1978年6月3日~24日放映(全4回)/TBS/村地弘美(19) | ||||
1986年10月4日放映/テレ朝/松原千明(28)
原作と10歳も違うって無理ありすぎです。 |
|||||
火の十字架 | |||||
名 前 | 星影冴子(ほしかげさえこ) | 家 族 | 年 齢 | 28歳 | |
職 業 | 「パラダイス劇場」経営者 | ||||
容 姿 |
|
||||
犯 罪 |
冴子は空襲の中、同じ劇団のスターだった花園千枝子を絞殺するが、千枝子の愛人一人だった、立花良介の策により死体は逃げ遅れた焼死体として処理される。戦後ヌードダンサーとして有名になった冴子の甘い汁を吸おうと同じ劇団の仲間で殺人の秘密を知っている、立花、三村信吉、滝本貞雄の三人が集まる。 そして良介をベッドに縛り付け、硫酸を浴びせ、惨殺する。金田一耕助らによって真相が暴かれた後、貞雄と冴子は逃避行するが逮捕される。 |
||||
考 察 |
戦争が終わり、ヌードダンサーとして自分の力だけで三軒の劇場を持っていた冴子にとって、過去の犯罪を知っている三人の男達の存在は、邪魔なものでしかなかったのであろう。 そんな彼らを殺すことにためらいなどない。悪女というのはこうでなければいけない。 |
||||
映 像 | なし | ||||
女怪 | |||||
名 前 | 持田虹子(もちだにじこ) | 家 族 | 夫:恭平(亡) | 年 齢 | 27,8歳 |
職 業 | 「虹子の店」マダム | ||||
美 貌 |
彼女はほっそりと華奢でなよなよとしていて、どこか頼りなげな、うったえるような眼付きをしていた。しかし、それかといって、決して弱々しいというかんじではない。どうしてどうして、白い、透きとおるような肌の下に、強靱な意志と沈潜した情熱をつつんでいるような女なのである。年齢はたぶん二十七、八歳であろう。 (角川文庫「悪魔の降誕祭」 180P) |
||||
犯 罪 |
夫の持田恭平のたび重なる暴力に耐えかねた虹子は、脳溢血に見せかけて夫殺してしまう。が、跡部通泰に殺害の証拠である頭蓋骨を盗まれる。 それをタネに関係を迫られた虹子は、恋人賀川春樹と結婚するため通泰を恭平と同じ方法で殺す。 しかし、金田一耕助の調べにより跡部通泰と賀川春樹は同一人物だったことがわかる。真実を知った虹子は、金田一に手紙を残し、青酸カリを飲んで自殺する。 |
||||
考 察 |
なんといっても金田一耕助が生涯で愛した、たった二人の女性の内のひとりである。夫の異常な性癖に悩まされ続けた虹子は、夫を殺害した。そして賀川春樹という恋人が出来つかの間の幸せを得ていた。 しかし、それも跡部通泰の出現により、壊れそうになる。一つの幸せを守るために行った殺人が、その幸せを壊してしまったのだ。哀れな女性である。もうちょっと男を見る目があればよかったのでしょうか?(^_^;)。だからといって金田一を選んだとしても、幸せにはなれないような気がするのだ。 |
||||
映 像 | 1992年7月27日放映/TBS/丘みつ子(44) | ||||
1996年4月26日放映/フジ/古手川祐子(37) | |||||
八つ墓村 | |||||
名 前 | 森美也子(もりみやこ) | 家 族 |
夫:達夫(亡) 義兄:野村荘吉 |
年 齢 | 30歳過ぎ |
職 業 | |||||
容 姿 |
そのひと----年齢はたぶん三十をいくらか出ているのだろう。肌の白くてきめ細かいことは上質の練り絹をであった。面長な、どちらかといえば古風な顔立ちなのだが、それでいて古臭い感じはどこにもなく近代的な才気がピチピチと躍動しているのは、うちにある知性のせいだろう。髪をアップにした襟足の色気はこぼるるばかりで、その夜彼女は、和服を着ていたのだが、きものの線の美しさときたら、こういうのを小股が切れあがったおんなというのではなかろうかと、私はそぞろに妖しく心の乱れるのを覚えたくらいであった。 (角川文庫版 52P) |
||||
犯 罪 |
愛する里村慎太郎に田治見家の財産を相続させるため、寺田辰弥の祖父の井川丑松、田治見家長男の久弥、洪禅和尚、梅幸尼、医師の久野恒実を毒殺。田治見小梅、妙蓮尼、田治見春代を絞殺。春代を殺したときに噛まれた指の傷が元で凄惨な死を迎える。 | ||||
考 察 |
殺人現場に、久野医師が空想した殺人計画のメモを残して、罪をなすりつけようとしたり、警察への密告状や役場前の張り紙などで、巧みに村人達を煽動して辰弥を襲わせたりと、目的の為には手段を選ばない。 怖いです。
と金田一耕助に言わせた女なのです。 |
||||
映 像 |
1951年12月2日公開/東映京都/(野々宮)美也子:御園裕子(?) |
||||
1977年10月29日公開/松竹/小川真由美(38) | |||||
1978年4月8日~5月6日放映(全5回)/毎日/鰐淵晴子(32) | |||||
1991年7月1日放映/TBS/夏木マリ(39) | |||||
1995年10月13日放映/フジ/名取裕子(38) | |||||
1996年10月26日公開/東宝/浅野ゆう子(36) | |||||
2004年10月1日放映/フジ/若村麻由美(37) ぱっと華やかな美也子でした。最後の金田一との対決は迫力がありました。ただ、里村慎太郎とのからみがあまりなかったので美也子が慎太郎を愛していたことが殺人の動機である、ということが原作を知らない人に伝わったのかどうか。 |
|||||
不死蝶 | |||||
名 前 | 矢部峯子(やべみねこ) | 家 族 |
夫:慎一郎
兄:宮田文蔵 |
年 齢 | 40前後 |
職 業 | 主婦 | ||||
容 姿 |
みずから当家の家内と名乗り、杢衛を父とよぶところをみると、これがさっき汽車のなかで噂にのぼった、英二の兄の慎一郎の夫人で、峯子という女であろう。 色白の、まずは美人といえるが、愛嬌にとぼしい、見識ぶったおんなである。 (角川文庫版 25P)
峯子は愛嬌にとぼしい、険のある目つきをして、担架づくりを手伝っている娘の都を視つめていたが、急に気がついたように辺りを見まわすと…… (角川文庫版 134P)
峯子はようやく落着をとりもどして、日頃のもったいぶった切り口上になっている。… (角川文庫版 137P)
美しいけれど愛嬌にとぼしいこの女は、生理的にも良人から満足をあたえられることが少なく、中年女のヒステリー性が、いっそうその人柄をとげとげしいものにしているのである。 (角川文庫版 145P) |
||||
犯 罪 |
射水の町で対立する二つの家の玉造家と矢部家。玉造家の娘、朋子と矢部家の長男、慎一郎のかけおち騒ぎの時、朋子を捜しに鍾乳洞に入った慎一郎の弟、英二は古林と一緒にいた慎一郎の婚約者、峯子を発見する。二人で会っていることを知られると不利な峯子達は英二を殺害する。 英二が朋子の着物の片袖を持っていたため、犯人は朋子であり、底無しの井戸に身を投げたということで、事件は終わるが、23年後、鮎川マリというブラジルの大富豪の娘が母と共に射水の町を訪れた。マリの母君江は朋子にそっくりであった。そのことを知った、矢部家の当主、杢衛は金田一耕助に捜査を依頼する。射水へ行く汽車の中で金田一満州帰りの古林と出会う。古林は、落ちぶれ果て矢部家を頼ってきていた。 鍾乳洞の中で、峯子と会っていたところをは杢衛を鍾乳石で刺し殺す。杢衛殺しは、君江の仕業ではないかと思われたが、君江の姿は行方がしれなかった。古林から脅された峯子は、彼を殺す。これも君江の仕業かと思われたのだが、実は君江はマリが変装した姿であり、実在しなかった。マリが事件の証拠を持っているという金田一への告白書を盗み読んだ峯子は、マリを殺そうとするが、峯子がこの事件の犯人と知った、兄の宮田文蔵により絞殺される。 文蔵は峯子の娘、都のことを思いやり、すべての事件の犯人は自分であるという遺書を残し自殺する。 |
||||
考 察 |
夫から愛されず、生理的にも満たされないまま、年をとってしまった峯子。それが、彼女から愛嬌をなくしてしまったんでしょうか。 「不死蝶」の評価がイマイチ低いのは、峯子が悪女としての魅力に乏しいからではないかと思うのです。 |
||||
映 像 | 1978年7月1日~15日放映(全3回)/毎日/岩崎加根子(46) | ||||
1988年2月2日放映/TBS/宮下順子(39) |